SHUYU
MOUNTAIN RANGE


enjoy rugby 夜明け前 −週休2日制の提言−
序
ラグビー憲章にあげられている5つのcore valueを下記の中から正しく選択できますか。
1.忠義 2.名誉 3.忍耐 4.自己犠牲 5.尊重 6.規律 7.品位 8.情熱 9.結束 10.闘魂
充実した3年間であった、とはいえない。
当時を振り返りながら、最近思うことを徒然に書かせていただき、修猷ラグビー部週休2日制を提言する。
高校では伸び代がないと思ったサッカーを捨てて、ラグビー部の部室の扉を開けた。1年生では、最初から試合に出してもらったこともあり、前向きに練習し学業の方も中の下あたりで済んでいたが、2年生のいつごろだったろうか、漠然とした不安や重苦しさを感じるようになり、練習後に同級生と蜂楽饅頭、まあちゃんうどん、馬場商店でたわいない話で過ごした時間だけは束の間の安らぎがあったが、帰宅して次の日の練習が始まるまでは、不安や重苦しさから逃れることができない毎日の繰り返しだった。グランドに出ると練習は普通に頑張れたものの、学校でも家でも勉強に手がつかなくなった。授業は頭に入らず、家では机の前に座ったところで、かいて居眠りするのがおちで、当然成績は奈落の底に沈んでしまい再び浮かぶことはなかった。この間、学業においては全く無駄な時間を過ごしたことになる。振り返ると情けないかぎりである。
成績が落ちたのは私のふがいなさのせいであるが、はて、あの時に体験したあの、漠然とした不安や重苦しさとは何だったのか。程度の差はあれ、心当たりがある諸兄もいよう。あらためて部活動の歴史をググってみると、驚くことに中学校を含め部活動は諸外国にはない日本特有の制度で、戦前戦中は軍事訓練の一環とされ、規律や服従が重視されたという。さらに遡れば当時、中学高校では当たり前と思っていた根性主義を掲げた部活動のあり方は、江戸時代以前の日本固有の精神主義に源流をなすらしい。すなわち、武士道といわれる忠義、名誉、忍耐、自己犠牲などの価値観、あるいは個人よりもチームや集団の利益を優先する集団主義の価値観が、昭和の部活動においても、厳しい先輩や指導者の体罰や叱責、しごき、根性主義の基盤となっていたようだ。そう、日本のラグビーはそういった武士道精神や集団主義に極めてよく馴染み「rugby」ではなく、ポジティブな意味も含めて実は「ラグビー道」だったのだ。我々の世代は一世代、二世代前と比べれば、はるかに「いい」時代になっていたはずだが、ラグビーをenjoyするということはまだあり得なかった。
平成後半から令和になって、いくつかの不幸な事件からの反省、さらに勝利至上主義に対する疑問、欧米でのスポーツ文化の報道や紹介などの理由で、日本でもようやく部活スポーツは心身を鍛えるということよりも、選手がスポーツをenjoyするということが第一である、という考えが賛同を得るようになってきた。18年にはスポーツ庁からスポーツ医学の研究を踏まえて「週休2日制」の提言がなされている。「過度な練習はスポーツ障害等のリスクを高め、体力・運動能力の向上につながらず、適切な休息を取ることで怪我、障害が減るばかりかむしろトレーニング効果を得ることができる」という科学的見地に基づく考えだ。休んでいる間にも不思議に上達することは多くの指導者が経験していると思う。当然、休息は心の傷の予防や治療にも有効で、休息により元気が出てラグビーをしたくなる気持ちも湧いてくるだろう。しかし、この提言には強制力はなく、現場では「無理やろ」と、検討さえされず提言後に週休2日制に移行した部は少数でしかない。
現役部員はすでにラグビーをenjoyしていて、私が感じた不安や重苦しさとは無縁だと信じたいが、東福岡高校が私立学校の特性を活かして盤石の態勢でいる現状を鑑みれば、花園に行きたいと望めば望むほど、練習がきびしくなればなるほど理不尽に直面し、我々の時代よりもむしろ心が折れやすい状況にあるともいえる。生徒にはできるだけ「わくわくした」気分で練習をして欲しいし、ラグビー以外のことでも高校生活を楽しんでほしい。あらゆる面で最高の環境にある修猷ラグビー部だからこそ「楽しく、かつ効率的に上達させる」ことが可能であり、率先して週休2日制を取り入れるべきである。100年を機に先生、部員、保護者の方々で話し合ってみてはどうだろうか。
現役部員のみなさん
Enjoy rugby, enjoy school life