SHUYU
MOUNTAIN RANGE

修猷山脈
平成7年卒
𠮷田 貞信

弥栄の猷を修める

中学卒業の春、高校入学前の3月下旬に練習に参加させてもらったのが、私と修猷館のラグビー部の初めての出会いでした。先輩たちに混ざって練習した小雨まじりの土のかおりや、旧ピロティの最端に設けられた下級生向けの屋外部室で談笑したあの時の空気を今でも懐かしく思い出します。

私が入部した頃の修猷館ラグビー部は、岡本先生が赴任されて数年目の時期でしたが、地区の予選を突破することもままならず、なかなか思うような成果を出せずにいました。個々の運動能力や資質的な面で他校にそんなに劣っていたというわけではなかったと思いますが、修猷館としてのラグビースタイル、そしてそのために日々の練習で何を積み重ねるのかということが定まりきらずに模索を繰り返していた時期だったように思います。初めて県大会に出場できたのは高校三年の春の大会、東福岡とあと一歩というところまで近づけたかなと感じたのが最後の花園予選・準決勝の試合でした。結果的には思うようなかたちにはならなかった高校でのラグビー生活でしたが、本気になって日々の練習に取り組めば小さくとも成果が出て、それをチーム全体が積み重ねることで目標とするところに近づけるんだという実感と、それでもなお目標に到達できなかったという悔しさは、その後の私の人生を影響づける大きなものであったと思っています。

その後OBとして修猷ラグビーに関わる時間はいつしか30年を超えました。エリート化が進むラグビー界の中で、公立高校でありながら県大会の常連校として常に上位を争い、修猷館らしいラグビーを体現し続けてくれる現役生たちの活躍は、自分たちには叶えられなかった花園への夢を今も心に抱き続けさせてくれつつ、OB全体としての様々な活動を盛り上げる原動力であると同時に、今の自分自身をさらに発奮させてくれるエネルギーでもあり続けてくれています。また修猷館ラグビー倶楽部を通じて得た先輩・後輩の方々との様々な交流やそこから拡がる人間関係は、ラグビーとしての範疇を留まらず、仕事に、遊びにと私の人生を何倍、何十倍も濃いものにしてくれました。修猷ラグビーを磨き続け私たちOBの帰る場所を保ち続けてくれている先生方、海外の旅先で快く迎え入れて頂き宿や食事をお世話して頂いた大先輩、馬鹿をやりつつ一晩中飲み明かした同期や後輩たち。全てがけっしてお金では買えない、私にとってのかけがえのない財産です。

最後に、弥栄(いやさか)について。益々の繁栄を祈る叫び声という意味であり、100周年をきっかけに改めて修猷館ラグビーの絆を表す言葉として皆で大切に受け継いでいきたいと考えていますが、私にとっては修猷館のラグビー精神を体現するひとつの儀式として、だんだんとその重みを感じています。その精神とは「あいつ、頭おかしっちゃないや」「あげなことしてから恥ずかしくないとかいな」と笑われ馬鹿にされようとも、自分自身を信じ切って、真顔でやり切る力。つまり宿願のために、本気で馬鹿になって狂える力です。現役・OB問わずこの力が横溢するとき、我々はきっと大きな事を為せるはずだと信じています。私自身はいまだ意志薄弱、弥栄3級程度ですが、ラグビー倶楽部の皆様と共にいつかきっと弥栄の猷を修め、栄光を手にと信じています。弥栄、弥栄、弥栄!

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