SHUYU
MOUNTAIN RANGE


バカになれ
修猷ラグビー部100周年おめでとうございます。100年に渡り脈々と歴史と伝統を紡いでこられた諸先輩方、後輩の皆様、先生を初めとする関係者の方々に敬意を表するとともに、現役当時のご厚情に改めて感謝申し上げます。
この度「修猷ラグビー山脈」へ平成10年卒を代表し寄稿させていただきます。
寄稿に当たり改めて思うのは、現在の自分はラグビー、修猷ラグビーに形作られているということです。社会に出て、営業マンとして走り回った若手の頃、管理職となった今日現在、折に触れて実感します。
「バカになれ」。岡本先生に何度か(何度も?)言われた言葉。当時は深く考えることもなく、「ただがむしゃらに励む」と解釈し、日々の練習に臨んでいた記憶があります。但し、そこに至る前に、忘れられない、きっかけとなる一つの出来事がありました。

主将を拝命した当初、私は「チームをまとめる」という主将の責務をはっきり言って勘違いしていました。2代前の川嵜さん、先代の川尻さんは、プレイヤーとしても一流で、プレーで見せながらも、主将として全体を俯瞰したリーダーシップを発揮しておられました。当時の私はプレイヤーとして未熟にも関わらず、自分のプレーを高めることを怠り、全体へ指示ばかりしていました。それが主将の務めであり、そうやってかっこつけていたのだと思います。
そんな私に、ある日の練習中、目の覚める出来事が。2人一組でタックル練習をしていた際、岡本先生が私の相方の智史に「智史、ゾノをなぐれ」と一言。「お前は何しようとか」と言われた私に智史の一発。ろくにタックルができていなかった私は、主将であるにも関わらず全部員の面前で先生に怒られ、同期に殴られるという、屈辱を味わいました。
「バカになれ」。言われた時期、回数の記憶は曖昧ですが、その屈辱以降、主将だからとかっこつけず、出来ない自分を認め、ただがむしゃらに練習に励むようになったと思います。プレイヤーとしては未熟なままでしたが、何とか最後まで主将を務め引退できました。
惜しくも花園の夢は叶いませんでしたが、3年間ともにバカになった同期12名は一生の仲間です。その絆・縁を得られたことはかけがえのない財産だと思っています。
「バカになれ」。今ならよく分かります。「バカになる」とは「ちっぽけなプライドや見栄を捨て、自分の弱みをさらけ出し、物事に真っ直ぐに向き合い、懸命に努力すること」だと思っています。そして、そういう人の周りには手を差し伸べてくれる仲間が集まるのだと。
社会人となって20年以上経ちますが、若手の頃から今に至るまで、この言葉を折に触れて思い出します。自分自身に向けて問いかけ自分を戒めたり、奮い立たせたり。後輩や部下に、その意味を自分なりに噛み砕いて伝えたり(今時「バカになれ」とはなかなか言い辛いので)。
これからも「バカになれ」。この言葉を胸に刻んで、一日一日を大切に、充実した人生を歩んでいきたいと思っております。